長野日報土曜コラム 令和1年6月22日掲載
154 あら探しはやめましょう
粗探しはリスクセンス
ことわざ「あばたもえくぼ」の意味は好きな人であればあばたもえくぼのように見えるということ。あばたとは皮膚の天然痘が治ったくぼみ跡である。一般に特別好きでもない人であれば、醜い傷跡にしか見えず本人の容姿にはマイナス要因になるだろう。
人は自分と相手を比べ違いがあればその箇所に注目する。背が低い、太っている、バランスが悪いなど身体的相違点は見つけやすい分攻めやすい。子供は遠慮や躊躇などがないので、見た目の違いを見つけて初めはからかい時にはいじめの対象にする。
足が遅い、滑舌が悪い、汗かきなど身体の内面に関わること、行動、習慣、話し方、癖など自分と違うところに目が向けられる。この感覚はおそらく自分と違うところがあれば、仲間ではないと本能的に判断する。リスクセンスが鋭いとも言えそうだが、自分との違いを不快に感じるのだろう。
自分との違いを見つければ、それを「粗」として攻めることがある。他人の粗を気にしやすい人の特徴として、コンプレックスを持ち精神的に不安、優越感を得ることが快感、嫉妬心があり相手を見下す、自慢話ばかりする人などである。
さらに自分が相手の粗と認めるだけでなく、多くの人に同調を求める。面と向かって「私は~ように感じている」とは言わず「皆があなたのことを~といっている」という表現を用いる。私がというと矛先が自分だけに向かうので、責任を免れることから皆を主語に用いる。
相手の粗を指摘する際の心理として、相手が羨ましい、相手に負けたくない、不公平を感じている、相手が目障り、相手を陥れたいなどがある。
相手が成功していれば相手の粗を指摘することで、自分の精神上のバランスを取り、相手の評価が下がれば自分は努力することなく評価が高まる。「他人の不幸は蜜の味」ということわざがあり、これは人の本音であろうが、本人が意識していないことがある。粗探しの対象にさせられた当事者は良い迷惑である。
粗探しへの対処法
粗探しをする人は自分の基準だけで判断しがちなので、人の多様性を認めようとしない。自分との違いにストレスを感じ、相手のその部分を攻めて取り除こうとする。相手が自分より優れていると感じれば、自分は劣っているとネガティブな気分を打ち消すために相手の粗を探す。
粗探しをする人への対処法として、「相手にしない」「同じ土俵に立たない」「大人の対応をする」などがあるが、相手が職場の先輩や上司であれば対応が難しい。
相手があなたを攻めるのは、尊敬されたい、自己満足を得たい心理があるので、相手の指摘に仮に悪意があっても「自分が気付かない点を教えてくれたことに感謝し、どのように修正したらよいかアドバイスを求める」ように相手の自我を充たし、言い争いにしない。事前に準備していなければ出来ない対応である。
もし相手の指摘する粗に反論すれば、互いの関係は更に悪化し、絶好の攻撃対象となり意地悪をされいじめられる危険性が高まる。
粗探しから生まれる発言で相手がどのように感じ傷つくか本人は相手のことを思いやる気持ちは持っていない。相手が傷つけばつくほど自分は優位に立てる。
粗探しをする人は一方的に悪く、粗探しをされる人は悪くないとは限らない。粗探しをされる人は多くの人とは何かしら違いがあり目立つ行動を取る場合がある。粗探しをされる側にも多少の原因があるかもしれないが、粗探しをする側にほとんどの問題がある。
粗探しをする人の特徴として負けん気が強く、プライドが高く、視野が狭い人である。これが職場で行われれば組織は壊れ、生産性は低下し、ストレスからうつ病を発することもある。上司から粗探しの対象にされれば、昇進はなく毎日が針のむしろ状態である。やがて表情も暗くなり職場換えではなく退職だけが頭に浮かぶようになる。
職場に限らず学校のクラス、町内会、趣味サークルなど人が集まれば、相手への気遣いと粗探しは表裏一体である。本人が粗探しをしている認識がない分こじれた糸は解けづらい。
無意識では貧乏人
金持ちと貧乏人の違いは保有する金融資産が多いか少ないかで区分される。はっきりとした金額で区分されているわけではないが、現在二人以上の世帯別平均保有額は1,800万円ほどである。
実はこの平均値より少ない世帯が7割近くになるという。多くの金融資産を僅かな人で占められているのがわかる。
貧乏人は保有する金額が少なくても収入の多い人もいる。たくさん稼いでたくさん遣うタイプである。貧乏人の言い分のひとつとして「貯金はないけど、それがどうしたの?いつ死ぬかわからないし、我慢せずに使ったほうがいい!後悔はしたくないから」にはもっともそうに聞こえるが本当に必要な時にお金がないのはみじめである。
しかし、多くの貧乏人に共通した特徴はそんなに潔いものばかりではない。「人のせいにする、責任転嫁の傾向がある」自分が大学を出ていればきちんと就職ができ収入も安定したはずである。親が教育費を出さなかったのが貧しい原因と、責任転嫁とマイナス思考が共存する。
「金持ちを妬む、ひがむ」妬みやひがみは相手が不幸になればよいと考える。金持ちを妬みひがめば金持ちを否定することになり、そんな金持ちに自分が成ろうとは思わない。
「整理整頓ができない」ことも貧乏人に共通するといわれている。部屋の中が物で溢れれば、何がどこにあるか分からない。目先の必要性から新たに購入すれば益々物が増えることになる。
「チャレンジが苦手」自分から現状に変化を起こさない。努力しても報われないと行動する前からマイナス思考になっている。他人任せで自らが金持ちになれるはずはない。
貧乏人に共通する特徴は粗探しをする人の特徴と良く似ている。マイナス思考で人の噂や陰口をたたいていれば友人は少なく人間関係は希薄になりがちである。このような人にどうして有効な情報が届けられ、お金に結びつくだろうか。
金持ちは人徳を磨き、お金に関して深く勉強し、無駄なものを買わないように自分の欲求をコントロールする行動を取っている。
現在世の中は知りたい情報は何でも知れるような社会である。金持ちになれる情報も貧乏人になる情報も溢れている。どちらを取得するかは自分次第である。
金持ちになろうとすれば新たなことを勉強し、実践し、これまで付き合ったことのない人たちと関係を築かなければならない。まさに努力と忍耐と研鑽が求められる。
何もしなければ現状に不満を感じ、それがストレスとなりバランスを取るために、相手の粗を探し攻撃する。特定の相手が見つからなければ、家族、職場、地域、社会に対象を探すかもしれない。そして世の中の不幸な情報を集めることで相対的に何もしない自分でも救われる。
週刊誌やワイドショーで取り上げるのは事故、事件、災害、不倫、離婚などでめでたい話題は少ない。大衆が知りたいのは世間の不幸な話題ではないだろうか。日常が不幸に包まれれば、自分はそこまで不幸ではないと慰められるので、新たな努力をしようと思わなくなる。
楽して幸せになるには相手が不幸になればよい。しかしそれでは短期的な満足は得られようとも、人生100年を通じた満足は相手の不幸だけでは得られない。
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