長野日報土曜コラム 令和1年12月28日掲載
160 使ってこそお金
生き金、死に金
お金は持っているだけでは大した意味がなく、使って初めてその価値が発揮される。よく言われることであるが、何でも気ままに使ってしまえば消えてなくなるのがお金である。どのように使えばその価値が十分に発揮されるのだろうか。
「生き金、死に金」という言葉があるが、生き金として使えばおそらく価値が発揮されるだろう。「生き金」とは新たな価値を生み出すお金の使い方である。
例えば自己投資であればさらに自身が成長するためにお金を使う。資格取得や語学勉強、講演セミナー参加等に使えば新たな知識の吸収が図られる。
また人間関係を広げるために地域サークル、各種交流会に参加して新たな親交を築くことも価値が高まる支出になるだろう。自分を除いた家族や他人のために使うお金も生き金の一つといわれる。
一方「死に金」とは自己成長につながらないお金の使い方であり、生活の中で不要なお金の使い方である。例えば自分のためだけに使用する贅沢品の購入である。また貯めるだけで活用しないお金も死に金に分類される。
「生き金、死に金」の区別は傍目からでは分からず、自身でどのように意識して使うかで決まる。何かの縁で巡ってきたお金を出来れば生き金として使いたい。
金融機関の預貯金の利息はほとんどなく増えることがないので「死に金」、株式有価証券等に投資した場合は増えることもあり直接企業を応援することになるので「生き金」という分類もある。
無意識なお金の使途
目の前に自由に使ってよいお金があればどのように使うだろうか。自分が現在強く望むものがあれば最優先にお金を使うだろう。空腹であれば腹がいっぱいになるまで食事に使うだろうし、頑張った自分へのご褒美として以前から欲しかった高級時計の購入を決断するだろう。
特別これといって欲しいものが見当たらない人はとりあえず貯金して欲しいものが現れたら使うだろう。おそらく自分の欲求の充足に従いお金が使われる。
人の欲求は5段階あり、下位の欲求が満たされると上位に向かう特性がある。最下位の欲求は「生理的欲求」である。生命維持にかかわる欲求であり食欲、性欲、睡眠欲等である。時間が経てば誰でも必ず腹が減るのは人に限らず動物にも共通した本能でもある。
次の欲求は「安全の欲求」である。身体への危険は種の保存が保てなくなるので、人および動物にも共通する欲求である。
身分や秩序、法律、構造などの安全の欲求は人に限定される。また保険加入や緊急事態への備えなども安全の欲求からくるといわれている。
続いて「社会的欲求」は友人や家族、組織に属して仲間を作りたい欲求である。動物が群れを作り生きる姿と共通する。
人は集い互いにコミュニケーションを図ることを好み、一人では孤独を感じ社会的不安になる。SNSを通じた仲間作りも社会的欲求からくるだろう。仲間作りが簡単に世界中に広げられるのでつい夢中になってしまう。
新たな仲間作りに夢中になるのは身近な友達や人間関係に満足していない現れかもしれない。だからもっと自分に合った仲間を見つけようと夢中になるのではないか。
最下位から4番目に当たる欲求は「承認の欲求」である。他者から尊敬されたい、認められたいという欲求である。この欲求は自分の評判、地位、名誉、出世欲、自己顕示欲等が該当する。
承認の欲求には他者からの評価とともに自己の自己に対する評価が存在する。自尊心を高めたいという欲求である。
他者からの評価を高めたい欲求の源には自分に自信がない場合があり、体裁を繕うことでバランスを保とうとする。一方自尊心を高めたい欲求は自己の成長欲求が含まれ、人ならではの欲求と思われる。
最上位にある欲求は「自己実現の欲求」である。自分の世界観、人生観に基づいてあるべき自分になりたいと願う。自分の可能性の探求、自己啓発行動である。
人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなり得る全てのものになり切りたいと感じる欲求であり、より一層自分らしく生きたい欲求である。
腹が満たされ緊急の身の危険がなく適当に仲間がいれば、次に求めるのが他者からの承認になる。ブランド品を持ち派手な生活や肩書を求める。自らは満足するかもしれないが、傍から見るとあまり格好良くない。
自分に厳しく自尊心を高めようとする姿は他人の目など気にしない。欠点も含め自ら受容し失敗にもめげずチャレンジを続ける。どちらも承認の欲求だが質としてはずいぶん違うものだ。
お金の使い方
お金は稼いで貯めて使って一循環する。稼ぎ方は勤労所得と不労所得に分けられるが、勤労所得の働き方は人生の遣り甲斐に通じる。不労所得はマネーゲームと思われるかもしれないが、世の中は多くの投資資金が活躍している。
投資は貯蓄と異なり元本が変動するが、その分高リターンを得ることがある。現在貯蓄は減らないことが唯一の利点である。
投資や貯蓄ではその配当や利息に税金がかかるが、免税効果がある制度や投じた元本が所得控除になる貯蓄制度がある。国は投資活発化を図り老後の年金の自助努力をすすめている。
稼ぎ方や貯め方が個人の生活に有利になる基準があるが使い方に関してはその基準は見当たらない。基準がないところで個人に任せれば、個人の欲求に従いお金が使われる。その欲求は遠い将来ではなく目先の欲求に支配される。
長い人生を俯瞰したライフプランに基づきお金の使い方を検討する。これは目先の欲求に左右されることがなく合理的にお金を使おうとする。
しかしこれだけではお金の過不足を調整できるが人生の味わいが少ない。人生を楽しめるお金の使い方を調べた。
人生を豊かに過ごすには趣味や遊びは必要である。そのために稼ぎに見合った分で趣味や遊びにお金を使い切る。人生楽しくないと働く意欲が湧かなくなり、結果的に稼ぎがさらに少なくなり手元に残らない。
自己成長のためにお金を使う。現役世代に限らずリタイヤ後も常に成長欲求を満たすことが必要である。いつか役に立つではなく今必要と思われることにチャレンジするほうがモチベーションが上がりやすい。
購買行動を損得勘定で考えれば自分以外の人にお金を使うことなど考えられない。自分で稼いだお金をなぜ他人に使うのかとなるだろう。
ところが他者へのプレゼントや寄付、奉仕活動、ボランティア活動は自分の人生に充実感を与える。自分のためより誰かのためのほうが頑張れるし、これまで気が付かなかった力が発揮される。
人はどうしても欲求により左右されてしまう。意識しなければ場当たりな欲求により判断する。そこでは常に生理的欲求が最優先され、次に安全欲求、社会的欲求、承認の欲求、自己実現欲求へ進んでいく。
下位の欲求は瞬間的に満たされても長続きはしない。人生に充実感を与えるにはより上位の欲求が満たされる場合である。
財布からお金を出す際に常にできるわけではないが、せめて大きな支出をする際はあらかじめ何にお金を使うか、それはどの欲求充足につながるか考えてみたい。
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